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AIと働き方の考え方(1/2)

AI、ロボット等が発達し、置き換えられる仕事が増えていく。働く個人にとって重要で確実な対処法とは。(2017.11.30)

メガバンク、人員削減の衝撃

 最近、いわゆるメガバンク三行が各行数千人規模以上の人員削減計画を発表して話題を呼んでいる。うち一行は、向こう十年間で二万人に迫る規模の削減を計画していると発表しており、金融業界ではかなりの衝撃を持って受け止められている。

 各行とも、AI(人工知能)などを使った業務の機械化・システム化を進め、いわゆるフィンテックと呼ばれる金融分野のテクノロジーを利用することで、人員を削減するのと共に支店数などを大幅に減らす計画だという。

 一般に企業は、中長期の経営計画では、ビジネスの拡大を目指すことをアピールして、規模の拡大を示唆する内容を発表することが普通だ。人員削減に力点を置いた計画を大々的に発表することは異例だ。率直に言って、経営者は「現時点で既に相当に人が余っている」という認識を強く持っているに違いない。行員としては、年齢によっては、「支店が減るということは支店長ポストが減るということだな」と出世の皮算用が狂うことを心配している人もいるだろうし、若い行員の場合、「将来銀行自体がどうなるのだろうか」という不安を覚えている人もいるだろう。

 考えてみると、高度な判断を伴うAIを使う以前の段階でも、機械的な処理に置き換えられる銀行業務は少なくない。また、データが十分整備されると、法人向けの融資のようなビジネス上の判断や駆け引きを伴う業務も相当程度AIで置き換え可能になる可能性も小さくない。

 過去にも技術の進歩によって産業が、ひいては人の仕事が変わってきたが、今後に大きな変化が意外な業種で起こるかも知れない。

 例えば、システムによって仕事の内容が置き換え可能であるという意味では、現在、就職先として人気を集めている公務員の仕事も相当に有力だ。将来は、公務員が安定した職業ではなくなる可能性が十分ある。

「眼」を持つAI

 エンジニアである読者の中にはこの分野がご専門の方もいらっしゃることと思うが、AI分野の研究者によると、現在は第三次AIブームと言っていい状況だという。

 第三次AIブームの大きなブレークスルーとしては、「ディープ・ラーニング(Deep Learning)」と呼ばれる機械学習の発達が挙げられる。プロの世界チャンピオンを破るようになった囲碁のAIなどの応用例が有名だが、経済・ビジネスにとっては、ディープ・ラーニングによって画像の認識が大きく発達したことの影響が大きいように思われる。ある専門家によると、AIによる画像認識(例えば、猫を猫と認識したり、個々の人の顔を識別したり)の精度が、既に人間の精度を上回るようになったのだという。

 この事は、AIが言わば「眼」を持つことを意味する。

 この技術は、現在頻繁に話題になる自動車の自動運転にも必須のものだし、例えばAIで制御されるロボットが「眼」を持つと、農作物を収穫したり、建設現場で無人で機械が動いたり、食品を加工して調理したり、室内を片付けたりといった多くの仕事が可能になるように思われる。これまで、ロボットにとって難しかった、対象の様子を見ながら、力を加減して各種の動作を加えるような作業が、繰り返し学習で習得されて人間のように行えるようになる。

 これらの機能は、既存の産業の労働を直接置き換えるようなものもあれば、現在は家庭内で行われていて直接的な経済取引の対象になっていないものの、多くの人手と時間を要しているような作業に貢献するものもある。

 例えば、調理と片付けの大半をロボットに任せられるようになると、もちろん家事が楽になるし、家事に時間を取られていた労働力が別の仕事を出来るようにもなるので、貢献は極めて大きいだろう。

 画像関連の技術は、例えば経済価値の大きな医療の分野などでは既に実用の域に入っていて、網膜の検査にも活用されているし、レントゲン写真やCT画像などから各種の癌の診断を人間の医師よりも高い精度で行うことが可能になっているという。

 今後も、応用の経済価値が高く、実用化のコストが小さい分野から順に、多くの「仕事」をAIが置き換えていくだろう。

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AIと働き方の考え方

AIと働き方の考え方(2017.11.30)

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著者プロフィール

山崎 元(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSN エンジニア採用Webサイトにて「エンジニアの生きる道」を連載中。

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