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株式会社VSN エンジニアを、笑顔に。VSN 経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」アイティメディア「@IT 自分戦略研究所」に同時連載中

職場の先輩との「差の詰め方」と「追い抜き方」(1/2)

多くのビジネスパーソンの能力的成長は30代前半で止まる。なるべく早く、将来にプラスとなるような時間と努力の投資を行いたい。(2017.08.31)

技術の状況による先輩・後輩の条件のちがい

 エンジニアである読者の皆さんは、ご自身の仕事の能力に対して、何らかの自信とプライドをお持ちのはずだ。例えば、同じ職場の先輩社員に対して、「自分の方が出来る(のではないか…)」などと思っておられる場合も少なくあるまい。人間としても、ビジネスパーソンとしても、そのくらいの負けん気があるのでなければ面白くない。

 もっとも、近くにいる先輩があまりに優秀で、先輩との差をどうやって詰めたらいいのかと考えると、気が遠くなるような状況の読者もおられるにちがいない。

 後者の状況は、精神的には当面大変かも知れないが、ビジネスパーソンとしてのキャリアを考えると、実は、大変恵まれた状況だ。自分よりも出来ないように見える先輩と一緒に働くのと、自分よりも遙かに出来る先輩を手本にしながら働くのと、数年後の自分に取ってどちらがプラスであるかは、言うまでもなかろう。本連載で何度か申し上げたことの繰り返しになるが、「優秀な人が多くて、忙しい職場こそが『いい職場』だ」。

 さて、仮に先輩社員と後輩社員がお互いが持つ技術で競う場合、現在その技術分野の状況がどのようなものであるのかに大きな影響を受ける。

 その技術分野が、現在急速に進歩している分野なのか、ある程度基本が固まって積み重ねの下にゆっくり進歩している分野なのかで、先輩・後輩の競争ゲームの状況は大きく変わる。

 技術分野自体が新しくてベースになる学問自体が急速に変化している場合なら、知識が古い10年選手よりも、大学の学部ないし大学院で最新知識を学んだばかりの後輩の方が、既に技術的に優れているといった事態が十分起こり得る。しかし、技術の基本があまり変化せずに、その応用の経験の積み重ねが「差」を作り出すような分野の場合、後輩が先輩に追い着き・追い抜くことは、相対的に難しくなる。

投資を巡る金融テクノロジーの場合

 一例として、エンジニアではなかったが、筆者の経験をお話ししよう。

 筆者が、自分の「本業」だと今でも思う投資の世界に入った、1980年代の半ばは、投資の技術は、自分のセンスを信じていわゆる「切った張った」の勝負に興じる相場師的な世界、あるいは企業の将来性や財務データを分析すると勝てると素朴に信じる古典的な証券分析(「ファンダメンタル分析」と呼ぶ)が主流だった。

 ところが、1980年代に入って、日本の投資業界にも、当時「モダン・ポートフォリオ理論(MPT)」と呼ばれた、これまでの方法よりも数学的なテクニックを深く使う理論が輸入され普及し実用化されつつあった。MPTは、先進国だった米国の学問(≒専門誌の論文)ベースでは、1960年代、1970年代に大きな業績が多数生まれたが、日本ではバブル経済の後押しを受けながら少し遅れて取り入れられたのだ。

 筆者は、1980年代半ばから1990年代前半にかけて、いわゆる「ファンドマネージャー」(お金を運用する専門職)の仕事に携わる若手中堅社員だったが、この分野の新しい知識を吸収するスピードは、当時の筆者の同世代の方が、先輩社員世代よりも早かった。当時は、先輩社員よりも筆者の世代の若手社員の方が仕事に必要な専門的な知識が豊富だという「専門スキルの逆転現象」がしばしば起きていた。筆者にとっては、張り合いのあるいい時代だったが、先輩世代には大変な環境だったかも知れない(読者にも、先輩の側に立つ時が来ることを忘れない方がいいと申し上げて置く)。

 専門知識がないので残念ながら想像の域を出ないが、現在脚光を浴びている、たとえばAI(人工知能)のような分野では、若くて新しい知識を持っている後輩社員の知識が、先輩社員のそれを凌駕しているというようなケースが多々生じているのではないだろうか。こうした分野は、先輩社員にとって厳しいかもしれないと拝察する。

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著者プロフィール

山崎 元(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSN エンジニア採用Webサイトにて「エンジニアの生きる道」を連載中。

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