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上手な仕事の任せ方、3つのポイント(1/2)

仕事を進める上で、「上手な仕事の任せ方」があるのではないか。筆者の経験も交えながら、「上手な仕事の任せ方」における三つの要素を取り上げてみたい。(2017.04.28)

書籍作りとエンジニアの仕事

 筆者は、仕事柄、連載の原稿を書いたり、雑誌、新聞、テレビなどの取材を受けたりする事が頻繁にあるが、加えて、ここのところ年に数冊単行本を出版している。

 エンジニア読者諸氏の仕事になぞらえると、連載の原稿執筆はシステムのメンテナンスのようなルーティンワークで、取材を受ける仕事はカスタマーサポートのような割り込み仕事(後の原稿確認まで気が抜けない…)、そして単行本の執筆は何らかの開発プロジェクトのような仕事の大きさと時間感覚だ。

 こうした仕事をこなしながら、近年気づいたことがある。それは、特に単行本の執筆にあって、仕事が進みやすい編集者と、そうでない編集者がいて、それは、主として「仕事の任せ方」によるのではないかということだ。

 著者と編集者の関係は、ドラマや漫画などでご存知かも知れないが、仕事を引き受けるまでは著者の立場が強く、「先生、よろしくお願いします」とおだてられることが多い。著者が書く気にならなければ、編集者・出版社は仕事が始まらない。しかし、実際に、本の企画が通って、執筆が始まると、「〆切り」の存在や、原稿の出来具合が、著者と編集者の関係を変えて行く。

 この過程で、仕事が進みやすい編集者と、仕事が進みにくい編集者とが分かれる。そして、その差は、著者と編集者の人間的な相性によるというよりも、編集者側が著者をコントロールする技術の差によるのではないかと思われる。

 本稿では、三つの要素を取り上げてみたい。

要素その一、仕事を任せる単位

 単行本の執筆は、本のコンセプトが決まり、大凡の構成案が出来上がって、企画書になって、これが出版社の社内手続きを通って、開始される。最も、シンプルな仕事の任せ方は「先生、社内で企画が通りましたので、執筆を開始して下さい。〆切りは○月×日です」というものだ。

 「〆切り」は、人類の最大級の発明と言ってよいと思うが、強力な仕掛けだ。もしも、この世に〆切りが存在しなければ、人類の全ての仕事の能率は、今よりも遙かに劣るものにとどまったのではないか。

 さて、著者にやる気と時間があれば、企画が通り次第、直ちに執筆に着手することになるが、一つには各種のルーティンワークがあったり、割り込み仕事が生じるせいで、なかなか着手されない場合がある。〆切りが、何ヶ月か先だと、その仕事は後回しにされがちだ。

 そして、一旦後回しにされた執筆は、企画が通った時の感動が薄れるし、時間が経つほどに着手が億劫になる。

 そうこうしているうちに、現実の〆切りが近づいてくる。〆切りのどのくらい前に、どのような連絡を入れて来るかは、編集者によって大きく異なるが、「〆切りを○月×日とご了解頂いておりますが、お原稿の進捗状況はいかがでしょうか」といった、様子を探るメールを入れてくることが普通だ。

 ここで、残りの分量が、とても〆切りまでにこなせないと思えるような場合、著者は、仕事を進める方法よりも、「〆切りに間に合わない理由」を、考えるようになる。ここまで来ると、本の完成は、一カ月単位で遅れていくことになり、酷い場合には、執筆が止まって、本が出なくなることも珍しくない。出版予告が出ていながら、やがて、その予告が消え、本が結局出て来ないといった「幻の書籍」をネット書店のホームページで見る事があるが、背景は大凡このような事情だ。

 著者側の勝手な都合ばかりを書いて気が引けるが、一度落ちた執筆のモチベーションを復活させるのは容易ではない。同様に、例えば、調査系の仕事をされているエンジニアの場合、一旦手を止めたテーマの研究に、再び取り掛かるのが難しいといったケースがあるのではないかと想像する。

 仕事の任せ方が上手な編集者は、「仕事の区切り方」が上手い。例えば、書籍の構成案に従って、一章ずつの〆切りを、例えば、一、二週間先くらい先に設定して、進捗状況について期間中に一、二度コミュニケーションを取って来る。

 仕事を区切る「サイズ」は、「一章」に限らない。三日なり、一週間なり、といった著者の集中力が続く期間に「頑張れば、出来る」と思えるくらいの分量がいい。「約束したのだから、書かなければいけないな」と思い、「頑張れば、約束を守れる」と思うと、〆切りが有効に機能するようになる。

 そして、〆切りに合わせて原稿を書くことが出来ると、編集者ばかりでなく、著者の側もほっとするし、「〆切りに間に合わせて書いた」という小さな成功体験が、次の〆切りに対する励みにもなる。

 仕事の「区切り方」は、仕事を任せる相手の、能力、責任感、仕事のタイプ(まとめてやりたいか、分割してやりたいか、など)による。

 かつて、ある運用会社で企画の部署でマネージャー的な仕事をしていた時に、部下一人一人によって、仕事を任せる適切な「仕事の単位」と「〆切りまでの長短」が違っていたことを思い出す。

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著者プロフィール

山崎 元(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSN エンジニア採用Webサイトにて「エンジニアの生きる道」を連載中。

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