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企業の合併・買収にどう対処するか(1/2)

近年、企業が丸ごと別の企業に買われるケースを頻繁に目にする。勤め先が買収されたり、合併の一方の当事者になったりするケースに備え、「会社が買われた場合の身の処し方」を考えたい。(2017.03.31)

会社ごと売買される時代

 近年のビジネス・ニュースを見ていると、既存の会社が別の会社に「買収」されたり、あるいは「合併」したり、「経営統合」が合意されたり、子会社の「売却」が発表されたりといった、企業が丸ごと別の企業に買われるケースを頻繁に目にする。

 具体的な企業名は挙げないが、かつては隆盛を誇った会社が買収されたり、あるいは親会社の経営失敗の煽りを受けて、業績が優秀な子会社が売却されたりといった事例を見ると、それぞれ買われて行く会社の「中」にいる社員達の気持ちが心配になる。

 企業の買収(逆側から見ると売却)には、「時間を買う」と言った言葉でしばしば説明される意図が前向きなものもあるが、企業買収それ自体は、経営的に成功しない場合が多いのも事実だ。

 ビジネスの世界なので、「変化」があることは已むを得ないのだが、これまでいいと思っていた会社の居心地が、自分達の責任とは納得しきれない理由で、急に変化するのだから、多くの場合は気の毒だ。読者である、エンジニア諸氏も、勤め先が買収されたり、合併の一方の当事者になったりするケースに遭遇する場合があるだろうから、「会社が買われた場合の身の処し方」を考えておこう。

 筆者が身を置く、金融の世界では、エンジニア諸氏の業界よりもかなり前から、企業が売買され複数の金融機関の経営が統合されるケースがあったし、特に、外資系の金融機関にあっては、企業買収は頻繁だった。金融機関には複数の名前を並べた社名が多いが、これは、もともとは別々だった金融機関が統合されたことの名残だ。

「対等」の呪い

 金融機関も含めて、複数の企業の経営統合では、経営的に主導的な立場に立ついわば「支配側企業」と、その後の経営をコントロールされる「被支配側企業」とが、実質的にはっきりしている場合が多い。

 金融業はステイタスやプライドに敏感な業界なので、建前上「対等」が強調される場合が多いが、A社とB社が統合される場合、あるいは、A社、B社、C社が統合される場合に、実質的な経営支配を握る会社がはっきりしている場合が多い。

 そして、例えば、A社が経営の主導権を握る場合、B社やC社の出身者はこれを快く思わないことが多い。個々の社員にしてみると、前の会社の仕事のやり方に対する慣れもあれば、前の会社に対するプライドもあるので、これは自然な感情なのだが、建前が「対等」な経営統合であっても、そのことには拘らない方がいい。

 理由は二つある。

 先ず、そもそも、二つないし三つの組織が本当に対等の関係にある経営統合は上手く行かないことが多いからだ。日本の会社は、しばしば50%対50%の出資比率で主導権が曖昧な合弁会社を作るが、この種の合弁会社は、社員が実に働きにくいし、意思決定と行動が遅くなりがちで、経営的に上手く行きにくい。

 被支配企業出身の社員は、経営統合が真に対等に行われて、出身企業に関わらず社員がフェアに扱われることに「希望をつなぐ」傾向があるが、その夢からは早く覚める方がいい。「真に対等」は共倒れへの道である可能性が大きいし、そもそも稀である。

 もう一つは、被支配企業側の勢力維持に期待することが、個人としての自分自身の立場の不利につながりやすいからだ。

 筆者は、もともと歴史という科目が苦手で、戦史に詳しい訳ではないが、戦いで劣勢な側が採る「籠城」という戦略がそれ自体として素晴らしく上手く行ったケースを知らない。城は一気に落とそうとすると攻撃側で兵力の損耗が大きくなるが、攻撃側がじっくり囲むことが可能な場合、第三者の援軍が現れるか、敵が仲間割れするかでもしないかぎり、城は兵糧が尽きるなどの事情で落ちて行く。劣勢側で経営統合された場合、外からの援軍は期待できないのだし、ビジネスの兵糧である、業務の予算、ボーナスの査定、人事評価などを支配企業側に握られているのだから、勝ち目は無いのだ。

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著者プロフィール

山崎 元(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSN エンジニア採用Webサイトにて「エンジニアの生きる道」を連載中。

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